Share

第17話 決意

Author: 文月 澪
last update Petsa ng paglalathala: 2025-07-01 16:00:38

 うっすらと意識が浮上すると、消毒薬の匂いが鼻をついた。あの後、何故か気が遠くなって、それからどうなったんだろう。

 真っ白いカーテンに仕切られた空間で、保健室にいることは分かった。誰かが運んでくれたのだろうか。

(そういえば、最後に先輩の声を聞いたような……)

 額に冷たいものを感じて腕を持ち上げると、すぐ横から声が上がった。

「凛ちゃん! よかった……気がついた? 気分はどう?」

 そちらに視線を移すと、心配そうに私を見下ろす先輩がいた。

「先輩……私、どうして……」

 確か、眞鍋さんが先輩を悪く言うから、カッとなって色々言ったんだ。それを思い出すと、今更になって手が震えてきた。

 誰かに口答えするなんてしたことなくて、よくあれだけ舌が回ったな、

Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App
Locked Chapter

Pinakabagong kabanata

  • 王子様じゃなくてもいいですか?   第69話 ふたりで

    「ア・イ・シ・テ・ル……ねぇ……少し古くない?」 伊吹がそう言って茶かすが、どうでもいい。それより知られたくないものがあったから。まだ俺の中でも整理がついてないもの、それは凜ちゃんにとってひどく辛い現実だ。「……トラウマが原因か?」 伊吹が鋭く切り込み、俺は力なく頷いた。「ああ、この先で俺は刺されたんだ……凜ちゃんのお母さんに……」 抑えた腹の傷が、まだ痛むように疼く。俺の様子から嘘ではないと悟ったのか、伊吹が息を呑み、硬直する気配が伝わってきた。「雨が降ってる日でさ……日曜日の、中途半端な時間だった。凜ちゃんと遊ぼうと思ったんだ……カッパ着て、鼻歌まで歌ってた。周りには誰もいなくて、そう少しで凜ちゃんの家っところで、お母さんに会って……気が付いたら病院だよ。それが原因で記憶を失って……」 俺は凜ちゃんが去っていった方へと視線を向けた。その先に、あの日が蘇る。「それって、お前が警察に届けたらいいんじゃ……って、そっか……新堂さんが悲しむ、よな」 伊吹の言葉に頷き、掌をじっと見つめる。「凜ちゃんが悲しむのは嫌なんだ。だけど、このままじゃ凜ちゃんはお母さんに捕らわれたまま、オウジサマを演じ続けるのも分かってる。俺が、決着付けないと……」 拳を握りしめ、そう決意する。「な~にかっこつけてんの。俺が言っても説得力はないかもだけど、たぶん新堂さんはそういうの嫌だと思うよ? きっと、お前と一緒に立ち向かうんじゃないかな……って、なんで睨むんだよ!?」 たしかに、凜ちゃんならそう言うだろう。 分かってる、凜ちゃんは優しくて、強い子だから。 だけど、こいつにそれを指摘されるのは腸が煮えくり返る。「あ? ふざけんなよ? なんでお前に凜ちゃんのことで諭されなきゃならねぇんだよ? は? 殴っていい?」 握っていた拳を持ち上げ、伊吹の胸倉を掴む。無駄にデカい図体しやがって、それがまた癪に障って仕方がない。「ああ! クッソ! マジでムカつく!」 身長差がありすぎてまともに届

  • 王子様じゃなくてもいいですか?   第68話 サイン

    「あ~……だけど、丁度良かったよ。こっからはお前が凜ちゃん送ってくれないか? 俺ちょっと用事があってさ」 先輩にしては歯切れの悪い言葉に、私は由香里ちゃんと顔を見合わせた。「そりゃいいけど……あんたが凜くんから自主的に離れるなんて、隕石でも振るんじゃない?」 そんなからかうような声に、先輩は眉を垂れながら頬を掻く。「あのな……俺だって最後まで送りたいけど……」 ちらりと私を見る視線には、どことなく怯えが隠れているように見える。どうしたのかと首を傾げて顔を見合わせる私と由香里ちゃん。そこに日下先輩がのんびりとやってきて、にこにこと笑う。見た目に反して、すごく優しい印象だ。 だけど由香里ちゃんはゲッと顔を歪ませて私の後ろに隠れる。「由香里ちゃん見~っけ。足早いんだね。でもすぐ見つかってよかった。これからカラオケにでもいかない? 新堂さんと、せとっちも一緒にどう? 由香里ちゃんも、その方が安心だよね?」 その提案に、由香里ちゃんはぶんぶんと顔を横に振る。「冗談じゃないわよ! あんたとカラオケなんて、なにされるか分かったもんじゃない! 凜くん行こ、可愛い雑貨屋さん知ってるんだ~。リボンとかピアスの種類が豊富でね、凜くんに似合いそうなのも見つけたの!」 私は由香里ちゃんに腕を引かれて、先輩達から遠ざかっていく。 不意に振り向くと、眉を垂れた先輩がお腹を押さえているのが目に入った。咄嗟に戻ろうとした私を、先輩は手で制し、力なく笑う。その隣で日下先輩が背中を支えているのが分かった。 気になったけど、先輩自身が知られるのを怖がっているような、そんな気がして。 寂しいような、悲しいような、重い不安が広がっていく。 私はまだ頼りないんだと、そう言われているように感じてしまった。 だけど、先輩は柔らかく微笑んで、口元だけで言葉を紡ぐ。 その意味を知った瞬間、私は体中が熱くなり、思わず顔を背けた。「ずるいよ……先輩……」 真っ赤になっているだろう頬を押さえ、呟く私に由香里ちゃんは楽しげに笑う。

  • 王子様じゃなくてもいいですか?   第67話 援護射撃

    「あーーっ!!」 いきなり上がった声に、私は思わず一歩後ずさった。先輩は邪魔されたことに不機嫌を隠そうともせず、舌打ちせいて声の主を睨みつける。「あ? またお前かよ……」 その視線の先にいたのは、私達を指さしてドスドスと近付いてくる由香里ちゃんだった。「ちょっとあんたね! こんなとこで凜くん襲ってんじゃないわよ! たく、これだから男って嫌なのよね」 由香里ちゃんは私に抱きつくと、引っ張るようにして先輩から距離を取る。先輩は眉間に皺を寄せながら、大きな溜息を吐いた。「んだよ伊吹のやつ、逃げられてんじゃん……」 その言葉に、由香里ちゃんは目を吊り上げて抗議する。「は!? あんあたらグルだった訳!? 私と凜くんを引き離して襲うつもりだったんだ! 最低!」 しかし、先輩は呆れたように肩を落として反論した。「違うっての。伊吹がお前と話したいって言うから、俺は協力してやっただけ。言っとくけど、あいつ今まで女に執着したことなんてないからな? 俺だって驚いてんだよ。あいつが女のことで頭下げるなんてなかったし。周りの奴らは遊んでたとか、喰いまくってたとか言うけど全部でたらめ。そういうの、お前の方が気持ち分かるんじゃねーの?」 先輩に諭され、由香里ちゃんはぐっと唇を噛みしめる。その視線は心を写したように揺れて、拠り所が欲しいのか、私の腕にしがみついてきた。「そ、そんなの、知らないし……人の噂まで気にする余裕なかったって言うか……」 ごにょごにょと言い訳しながら、由香里ちゃんは私の影に隠れてしまう。先輩はにやりと笑って、私に目配せした。「余裕がない……ねぇ。その割には、俺の噂に詳しかったじゃないか。凜ちゃんに忠告してたんだろ? 危ない奴だからやめとけって」 私はその言葉に苦笑いを浮かべる。先輩も、その理由が分かってるんだろう。口籠る由香里ちゃんを優しい眼差しで見守っていた。「だ、だって! それは凜くんを危険な目に遭わせたくなくて……それで……」 本当に、由香里ちゃんって優しい子だな。他に攻撃できるところが無いからこ

  • 王子様じゃなくてもいいですか?   第66話 オウジサマ

     ひとしきり泣いて落ち着いてくると、途端に恥ずかしくなってきた。私は先輩から離れ、鞄からタオルを取り出すと顔を隠すようにして覆う。「ごめんなさい……こんな子供みたいに泣いて、恥ずかしい……」 今まで泣くことさえできずにいた反動で、先輩に甘えてしまった。ちらりとタオルから覗くと、先輩は柔らかく微笑みながら私を見つめている。それがまた恥ずかしくて、タオルに逆戻りしてしまった。 そんな私にも、先輩は文句も言わずに頭を撫でてくれる。「謝んないでよ。俺の胸でいいなら、いつでも貸すからさ。っていうか、他の奴に凜ちゃんの泣き顔見せたくない。俺だけが知ってる、凜ちゃんだから」 タオルをつんと引っ張り、私の顔を覗き込んでくる先輩には妙な色気が醸し出されていた。「耳まで真っ赤……ほんと可愛い……」 そのまま私を引き寄せると、耳たぶにチュッと吸い付く。「!?」 突然のことに飛び退った私を楽しそうに見つめながらにじり寄ってくる先輩は、さっきまでの真剣な表情を緩めて笑った。「ほら、そういうとこだよ。なんでこれで『オウジサマ』なのか理解できないな~。まぁ、でも……変な虫がつかなかったのは不幸中の幸いって奴?」 少しお茶らけてそう言うと、腰にぎゅっと抱きついてくる。「ちょ、先輩!?」 すれ違う人達の視線を感じて慌てる私に、先輩はきゅるんと瞳を潤ませて見上げてきた。「これからは……ずっと一緒……だよね……?」 そのあざとさに、くらりと眩暈がする。 色気と幼さのギャップに脳がパンクしそうだ。 ただでさえ恋愛なんて慣れてないのに、こうも真逆に迫られたらどうすればいいのか全然分からない。 私の動転を察したのか、先輩はにやりと口元を歪め、握り絞めているタオルから指を離すと、今度は胸元のリボンを引いて顔を寄せる。鼻がぶつかりそうな至近距離で見つめられ、つい視線をそらしてしまった。「せ、先輩……人が見てますから……」 周囲からは好奇の視線が集まっていて、その中にクラスメイトの姿を見つけて頬

  • 王子様じゃなくてもいいですか?   第65話 寄り添う心

     お姫様。  それは、私とは相容れないものだと思っていた。だけど、先輩は私をお姫様だと言ってくれる。「凜ちゃんはさ、優しくて、かっこよくて……周りが『オウジサマ』って言うのも分かるんだ。でもね、俺から見れば、食べちゃいたいくらいに可愛い女の子なんだよ。サラサラな髪も、柔らかそうな唇も……ずっと触ってたい……」 先輩は腕を伸ばし、そっと私の唇に触れる。「もし、凜ちゃんと一緒に過ごせてたらどんなに良かったろう……絶対『オウジサマ』なんて呼ばせなかったのに。俺がずっと傍にいて、守りたかった……待たせてごめんね……」 眉を垂れて囁くように呟く先輩は、私よりも身長が低いのに、とても頼もしく見えた。これまで言われてきた言葉とは全く違うセリフに、心が満たされていくように感じられて、きゅうっと締め付けられる。涙が頬を伝い、私は俯いて嗚咽を漏らした。「……私、みんなに囲まれてても寂しかったんです……『王子様』って呼ばれても、嬉しくないの……だけど、お母さんが喜ぶから……だから……」 私の世界は、お母さんを中心に回っていた。 趣味も、服装も、習い事も、全部お母さんの言うようにしてきた。それは、できるだけ穏便に過ごしたかったからに過ぎない。「お母さんのためとかじゃないんです……ただ、怒らせないようにしてただけ……私の身勝手なんです……」 みんなからチヤホヤされて、いい気になっていたのも事実。 だって、必要とされるから。 本当の私は、ゆうちゃんの後をついて回るだけの、非力な子供だ。そのゆうちゃんを失って、周囲の期待に応えることでしか自分を保てなかった。「ゆうちゃんのことを思い出してから、また昔の夢を見るようになったんです。ゆうちゃんが優しく笑って、手を差し出してくれるの……だけど、お母さんがゆうちゃんをどこかに連れて行って……私は真っ暗な部屋で泣いてるだけ……」 先輩は私の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめてくれた。「うん……大丈夫、もうどこにも行かないから。ずっと凜ちゃんの傍にいるよ。だから泣かないで……」 背中を摩りながら、先輩は私が泣

  • 王子様じゃなくてもいいですか?   第64話 お姫様

    瀬戸先輩と一緒の帰り道。 それはほんの小さな変化だけど、私にとっては大きな意味を持っていた。今まで特定の誰かと親しくしないようにしていた私は、友人と呼べる人が少ない。クラスメイト、それが一番しっくりくる名前だった。 でも、今隣にいるのは確かな好意を感じている人で、私を想ってくれている人。 少しくすぐったいけど、心が温かくなるのが分かる。 考えないといけないこと、向き合わないといけないことは多い。 だけど、先輩がいてくれるだけで、心が強くなったように感じた。 「凜ちゃん、あんまり自分を責めないで。君は優しいから、全部自分で背負っちゃいそうで怖いよ。俺もいるんだから、頼ってくれると嬉しいな」 先輩は私の顔を覗き込み、ふわりと微笑んだ。胸がきゅうっと締め付けられ、頬が熱くなる。こんな気持ち初めてで、どう返事したらいいのか分からない。 言葉に詰まる私に、先輩は優しく寄り添ってくれた。 「凛ちゃんって、人に頼るの苦手そうだよね。今まで『オウジサマ』って呼ばれて、頼られてばっかりだったんでしょ?」 その問いかけに図星を刺され、思わず視線が泳ぐ。昨日の朝、中庭で話していたことだけど、今では少し意味が変わっていた。 先輩は、素の私を知っている。幼稚園の頃の、まだ『王子様』じゃない私を。 「……そう、ですね……ずっと頼られて、それが当たり前で……家でも、学校でも、気が休まるところはありませんでした……」 お母さんがこだわる『王子様』は、同級生には都合のいい存在だった。何を言われても笑顔で返し、求められるものを差し出してきた。そうしなければ、息ができなかったから。 先輩は静かに聞いてくれる。繋いだ手をしっかりと握り、もう片方の腕で抱きしめてくれた。背中に回された腕は、想像よりたくましくて、力強い。「うん……凛ちゃんはいい子だね。昔と変わらない……ボクの……俺の、凛ちゃんだ。これからは俺がいるから、我慢しなくていい、頼って、なんでも言って。俺は何があっても、凛ちゃんの味方だから」 暖かい腕の中で、視界が滲む。「先輩……ゆう、ちゃん……私……『王子様』なんて……やだよ……女の子だもん……ただの……女の子……だから……」 先輩は背中をさすり、何度も頷く。「うん、凛ちゃんは女の子だよ

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status